保存治療を行った膿瘍形成虫垂炎と Uncomplicated appendicitisの比較




単純性急性虫垂炎の治療におけるアモキシシリン+クラブラン酸による抗生物質治療の効果は、緊急虫垂切除術よりも劣っており、現在でもgold standardは虫垂切除術であることが、フランス・アントワーヌ・ベクレール病院のCorinne Vons氏らの検討で明らかとなった。急性虫垂炎は、急性の腹痛で入院した患者の中で手術を要する頻度が最も高い疾患だという。4つの無作為化試験をはじめいくつかの検討で、単純性急性虫垂炎は抗生物質治療で治癒が可能であり、1次治療となる可能性もあることが示唆されている。Lancet誌2011年5月7日号掲載の報告。



研究グループは、単純性急性虫垂炎の治療における抗生物質治療(アモキシシリン+クラブラン酸)の緊急虫垂切除術に対する非劣性を検証する非盲検無作為化試験を実施した。

2004年3月11日~2007年1月16日までに、フランスの6つの大学病院からCT検査で診断された18~68歳の単純性急性虫垂炎患者が登録された。

これらの患者が、アモキシシリン+クラブラン酸(体重90kg未満:3g/日、90kg以上:4g/日)を8~15日間投与する群あるいは緊急虫垂切除術を施行する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、介入後30日以内の腹膜炎の発生率とした。





243例が登録され、123例が抗生物質治療群に、120例は虫垂切除術群に割り付けられた。介入前に早期脱落した4例を除外した239例(抗生物質治療群120例、虫垂切除術群119例)がintention-to-treat解析の対象となった。

30日以内の腹膜炎の発生率は、抗生物質治療群が8%(9/120例)と、虫垂切除術群の2%(2/119例)に比べ有意に高かった(治療群間差:5.8例、95%信頼区間:0.3~12.1)。

虫垂切除術群では、事前にCT検査による評価を行ったにもかかわらず、予想外にも手術時に119例中21例(18%)が腹膜炎を伴う複雑性虫垂炎であることが判明した。

抗生物質治療群120例のうち14例(12%、95%信頼区間:7.1~18.6)が30日以内に虫垂切除術を施行され、この14例と30日以内に追跡を中止した4例を除く102例のうち30例(29%、同:21.4~38.9)が30日~1年までの間に虫垂切除術を受けた。前者のうち急性虫垂炎であったのは13例(再発率:11%、同:6.4~17.7)、後者では26例であった(同:25%、18.0~34.7)。

著者は、「急性虫垂炎の治療におけるアモキシシリン+クラブラン酸による抗生物質治療の緊急虫垂切除術に対する非劣性は確認されなかった。現在でも、緊急虫垂切除術は単純性急性虫垂炎の治療のgold standardである」と結論し、「CT検査に関する予測マーカーが同定されれば、抗生物質治療が有効な患者の選出が可能になるかもしれない」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)


急性虫垂炎患者のうち、複雑性虫垂炎(壊疽性/穿孔性/膿瘍形成性 ..

例えば再発したとき虫垂に穴があいているまたは穴が開く可能性が高い場合には基本的に手術を勧められることが多いと思います。一方で前回と同様に軽症であれば手術をしなくとも治る見込みがあると言われるかもしれません。この場合は手術と抗生物質のどちらでも選ぶことができます。

急性虫垂炎を薬で散らした後には食事などに気を配りできるだけ腸に負担をかけないようにすることを心がけましょう。

虫垂炎などの市中腹腔内感染症でもルーチンで培養と感受性検査を行うべきである ..

急性虫垂炎が再発した場合、最初の治療と同様に手術か抗生物質による治療を選ぶことになります。急性虫垂炎が再発した場合の治療はデータが少ないので手術と抗生物質の優劣をつけることは難しくその状況により適切な治療法も変わります。

単純性虫垂炎に対して保存的加療の成功率は手術と同程度の成功率ですが、入院期間が長くなり、18%程度で再燃するということになります。

抗菌薬と手術、小児の虫垂炎に最善の治療法はどちら? 2024/12/26 医療一般 ..

単純性急性虫垂炎に対する非手術治療と虫垂切除術の有効性および安全性を検証した報告で、成人患者で非手術治療と虫垂切除術を比較した無作為臨床試験8件(1504研究の中から厳選)をまとめて解析した論文で系統的レビューと言います。
(結果)
手術群と非手術群の30日後の治療成功率に有意差を認めませんでした
手術群と非手術群の30日後における有害事象の発生率に有意差を認めませんでした

しかしながら
非手術群では
入院期間が手術群より有意に長い
虫垂炎の再燃が18%
が認められました。

急性虫垂炎を抗生物質で治療するときには同時に食事を一度中止することがあります。食事を中止する狙いは腸管を休めることです。虫垂は腸の一部なのでが起きているときには腸管を休めることが治療になります。急性虫垂炎になった場合は腸をとにかく休めてあげることが大事です。これは薬による治療が終わった後の日常生活にも当てはまります。再発する可能性がある虫垂が体の中に残っているのでできるだけ腸に負担をかけないよう食生活を工夫をしてみましょう。

5) 虫垂炎・胆嚢炎・絞扼性イレウス(小範囲)で、周囲組織・臓器を汚染 ..

ランダム化試験(RCT)の結果、抗生剤保存的加療群と手術群を比較し、腹膜炎発症率は前者が8%に対して、後者では2%と優位に低いという結果であった。
また前者では悪化のため最初の30日以内に12%手術を要し、1ヶ月から1年の間では残りの29%が手術を要した。

急性虫垂炎が再発すると腹痛などの症状が現れます。抗生物質による治療後の再発率はどのくらいなのでしょうか。


虫垂炎に対するN000 病理組織標本作製の算定は、原則として年齢にかかわ.

合併症をもたない急性虫垂炎は抗生物質による治療も有力な選択肢です。合併症とは虫垂に穴があいていたりの溜まりがあることです。

右下腹部痛の場合には虫垂炎との鑑別を要します。ただ虫垂炎に見られる ..

「急性単純性虫垂炎における抗生剤と手術は同等の有効性と安全性を示す」ことがランダム化試験(RCT)の結果をもって示された。内容:急性虫垂炎のうち穿孔性や膿瘍形成性虫垂炎などの複雑性虫垂炎は全体の20%程度であり、残りの多くの単純性虫垂炎において1年後まで症状なく経過したものは63%で手術群にくらべ合併症の相対リスクが31%減少するということであった。しかしながら、抗生剤初期治療に成功した群でも約40%は1年後までに何らかの症状が再燃し、20%は再入院となり手術が必要であった。再入院になった症例のうち穿孔や膿瘍形成などの複雑性虫垂炎に進展していたものは21%にのぼっていた。

虫垂炎,胆嚢炎,絞扼性イレウス(小範囲)で,周囲組織・臓器を汚染する

近年、抗生剤の進歩により虫垂切除なしで虫垂炎を治療可能な症例、すなわち「抗生剤で散らす」ことが可能な症例も増えてきましたし、むしろ、現在では正確な画像診断・抗菌薬の進歩に伴い、単純性急性虫垂炎を緊急手術することは外科医や看護師などのマンパワーの問題などから、夜間の緊急手術は回避される傾向にもあります。

胆囊炎は虫垂炎に次いで 2 番目に多い妊娠中の外科的疾患であり,1,600 ~ 1 万件 ..

虫垂炎について、患者さまからいただいた質問を集めました。ここで解決できないことはお気軽に質問ください。

非複雑性の急性虫垂炎は内服治療だけで治療できる?|Nasuketore

「たかがアッペ、されどアッペ」
“アッペ”とは虫垂炎(appendicitis)のこと
というフレーズは多くの外科医が口にし、外科手術書にも記述が残る。
虫垂炎診断や手術難易度の奥深さを象徴する言葉であります。
私が外科医として働き初めた頃(30年前)には 右下腹部痛で腹膜刺激症状(腹部を圧迫してその圧迫を解除した際に起こる激痛)があれば昼でも夜でも「即緊急手術」という指導をされてきました。
それは昭和戦前の大学病院の外科病棟の入院患者は半数以上がアッペによる腹膜炎患者であったという経験によるものです。
1935年慶應大学茂木らの報告(第36回日本外科学会宿題報告「急性虫垂炎」)によると「急性虫垂炎の死亡率0.39%は米国1.52%より低いが、腹膜炎死亡率は日本2.93%に対して米国0.16%である」と述べ、急性虫垂炎が穿孔し腹膜炎を発症した場合には極めて重篤な状態に陥り、命を失う症例が3%もあるという事実である。」という事実は、注目を浴び、腹部所見で虫垂炎の診断が付けば即手術、と言った時代背景があります。

急性単純性虫垂炎の治療(NEJM総説) | 病棟薬剤師&DIやん

現在の治療法として、外科手術によって虫垂を取り除く方法(虫垂切除術)または、薬剤によって炎症を抑える方法(抗菌薬治療)があること、外科手術には開腹手術と腹腔鏡下手術があることを情報共有します。

急性虫垂炎(盲腸)(きゅうせいちゅうすいえん・もうちょう)の疾患、症状、検査、治療について、詳しくわかる解説ページです。

虫垂は、通常右下腹部にあり、大腸の始まり部分の盲腸にぶら下がっている小指くらいの腸のことです。
虫垂炎は、この虫垂の内部で細菌が増殖して炎症が起こった状態です。
典型的な症状は「最初胃(みぞおち)の辺りが痛くなり、その後徐々に右下腹部に痛みが移動、吐き気や発熱が起こってきた」といったものです。
重症化すると虫垂の壁が破れて穴が開くことがあり、これを「穿孔性虫垂炎」といいます。虫垂が穿孔すると溜まっていた便や膿が腹腔内にもれて腹膜炎などの合併症を起こし、重篤化することがあります。
急性虫垂炎は急性腹症(最後にまとめ)の中で内科、外科を問わずに日常的に遭遇しうる頻度の高い疾患であり、その生涯罹患率は7-14%と、権威のあるジャーナルの文献(Flum DR : Clinical practice; Acute appendicitis; appendectomy or the “antibiotics first” strategy. N Engl J Med. 2015; 372 : 1937-1943 )が記しています。
10~20歳代に最も多く、加齢に伴い減少していくとされてきましたが、最近は高齢化の進行に伴い、高齢者症例が増加しており、しばしば腹膜炎による重篤化を認め、私が非常勤として勤務する急性期病院では集中治療を要する症例も認めます。

急性虫垂炎 | ガイドライン(鑑別・症状・診断基準・治療方針)

ここで本邦における虫垂炎手術症例数の推移を示すデータを示します。
非常に興味深い現象が新型コロナ感染症の結果読み取ることができますので、私の分析をまじえ、説明します。

クランブラン酸を投与している. 解析1として,対象症例をAA群とUA群に分け,

AMPC/CVAによる非手術的治療は、 小児の急性虫垂炎に対して手術の代替治療となる可能性がある。 これらの結果を確認するために、 現在進行中の研究の結果を待つ必要がある。

アモキシシリン・クラブラン酸; レボフロキサシン+メトロニダゾール; シプロフロキサシン+メトロニダゾール

虫垂炎再発後に切除術を受けた15例のうち、 腹膜炎、 穿孔、 骨盤膿瘍を呈した患者はいなかった。

NEJM, May 14,2015, Clinical Practice

本邦では年間50,000症例以上の虫垂炎が手術されていますが、大部分の症例は急性虫垂炎で緊急入院の症例です。
ここ数年の大きな傾向としては開腹手術が減少(41.4%→29.4%)し、腹腔鏡手術が増加(58.5%→70.3%)していることです。また2019年度から腹腔鏡手術による『日帰り手術』が始まったことです。
腹部CT検査による術前診断の精度が上がったこと、傷が小さな低侵襲手術である腹腔鏡手術が普及したこと、また今回紹介したような権威あるジャーナルが認めた『科学的根拠のある治療法』として、『虫垂炎=手術』ではなく、『抗菌薬治療による治療』が実施できることがわかり、症例によっては患者さんの時間のロスが少なくなります。
そこで上の表をみてください。虫垂炎に罹患する人数が急に減少することなどありえませんので、2020年にも50,000人以上の方が虫垂炎を患ったはずです。
手術症例が減ったのは新型コロナ感染症の影響なのです。『不要不急の入院』をさせることができなかった病院は『虫垂炎=手術』ではなく、『抗菌薬治療による治療』を選択したのです。
その結果、腹膜炎が増えたなど、全くありませんでした。新型コロナ感染症を経験した結果、『科学的根拠のある治療法』として『抗菌薬治療による治療』が実施できることが身をもって経験することができたのです。
ただし、ここからが大事なところです。
『抗菌薬治療による治療』で改善した中の20-40%が再燃するので、患者にそのことを説明して、希望される方には手術を提案するべきではないでしょうか?
災害・戦争などで経験したことを生かして復興した日本です。
『日帰り手術』を普及することで医療経済の崩壊を食い止め、子どもたちへの負の遺産を少しでも軽減することにご協力ください。

中等症又は重症の場合 アモキシシリン(AMPC)高用量内服 5~7 日間.

子どもの場合も大人の急性虫垂炎の場合と同じく手術か抗生物質治療を行います。

アモキシシリンと6.4 mg / kg /日のクラブラン酸塩分2

また、手術を行うことになっても手術前後に抗生物質を用います。明らかに合併症(虫垂の破裂、膿瘍の形成、バイタルなど)がなければ、用いる抗菌薬はセファゾリンが適していると考えられています(Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases 8th edition)。これを用いることで創部感染などの手術後の感染症トラブルを減らすことができます。