Q 花粉症、アレルギー性鼻炎、ペニシリンアレルギー、蕁麻疹がありますが大丈夫ですか? ..
この春は新型コロナ感染症が収束しない中でスギやヒノキの花粉シーズンを迎え、花粉症の人は自身や周囲へのコロナ感染リスクが高いため、例年以上に徹底した対策が求められました。
また、日本でも始まったコロナワクチン接種にあたっては、重篤なアレルギー反応であるアナフィラキシーや、抗ヒスタミン薬やアレルゲン免疫療法薬などの服用可否を心配する声も聞かれます。
質問8 新型コロナワクチンの接種に関して、抗がん剤使用中の患者さんで ..
アナフィラキシーは、アレルゲン(アレルギーの原因物質)となるたんぱく質が、体の中に侵入したことによって、複数の臓器で全身性のアレルギー症状が急激に引き起こされ、命にかかわることもある過敏反応です。皮膚やのどなどのかゆみ、赤い腫れ、じんましん、動悸、息苦しさ、腹痛、嘔吐、頭痛、めまいなど、全身に症状が出現します。血圧低下や、呼びかけに反応しないなどの意識障害を伴う場合には、「アナフィラキシー・ショック」と呼び、対応が遅れると命が脅かされることがあります。
アナフィラキシーは、花粉症、喘息、アレルギー性鼻炎などと同じアレルギー反応の一種で、本来は体を守るはずの免疫機構の誤作動から起こります。私たちの体には、ウイルスや細菌などが侵入してきたときに「抗体」をつくる免疫機構が備わっています。抗体がつくられると、次に同じ病原体が入ってきたときに免疫細胞が攻撃を開始し、体の外へ排除します。
ところが、免疫機構の誤作動が起こると、食べ物や花粉など、体に害を与えない物質にも過剰に反応して、アレルギー症状を引き起こします。アレルギーのある患者さんの体の中では、アレルゲンとなる物質が体の中に入ると、それを攻撃するために「Ig E(アイジーイー)抗体」と呼ばれるたんぱく質がつくられます。
Ig E抗体は、皮膚や粘膜に多く存在するマスト細胞(肥満細胞)に張り巡らされています。そして、再びアレルゲンに触れたりアレルゲンが体内に入ったりしたときに、Ig E抗体がアレルゲンに結合すると、アレルギー反応を引き起こすヒスタミンなどの化学伝達物質がマスト細胞から放出され、アレルギー症状を引き起こします(下図)。このうち、全身の症状が急激に引き起こされる重篤なアレルギー反応がアナフィラキシーです。
じんましんや咳などが出るのは、血管や体内の水分を一気に放出して異物を体外に出そうとするためで、ヒスタミンなどの働きによるものです。
腹痛、下痢、嘔吐などの消化器症状は消化管がむくむことで、のどがぜーぜー鳴る喘鳴や呼吸困難は気管がむくむことで起こります。
ショック状態になるのは、血管の中の水分を一気に血管の外へ放出しようとして脱水症状になり、血圧が急激に低下するからです。
アナフィラキシーを起こしやすいアレルゲンには、主に食物、昆虫、医薬品があります(下表)。
食物アレルギーの患者さんの約8割は子どもです。子どもの場合は、鶏卵、牛乳、小麦が、大人の場合は小麦、甲殻類、果物がアレルゲンとなることが多いのが特徴です。
また、アレルゲンとなる食物を食べただけでは何の症状も出ないのに、直後に運動することによって誘発される、「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」もあります。運動で誘発されるアナフィラキシーを起こしやすいのは、特に小麦、甲殻類です。
昆虫では、スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチなどに刺されたときに、アナフィラキシーを起こすことがあります。食物によるアナフィラキシーは、食後30分以上経ってから起こることが多いのに対し、ハチ毒によるアナフィラキシーは、刺された直後5〜10分以内に起こるため注意が必要です。
そして、最近増えているのが、医薬品によるアナフィラキシーです。長年使っていた薬で突然アナフィラキシーを起こすこともありますし、初めて用いた薬で起こることもあります。アナフィラキシーを起こしやすい医薬品には、βラクタム系(ペニシリン系、セフェム系など)やニューキノロン系などの抗菌薬(抗生物質)、解熱鎮痛薬、関節リウマチなどの治療に使う生物学的製剤などがあります。さらに、まれではありますが抗がん剤、アレルゲン免疫療法でも発症します。CT検査やMRI検査などの際に各臓器の血管の中を透視するために用いる造影剤で発症する患者さんもいます。解熱鎮痛薬や市販の風邪薬などでも服用後に運動をしたことによって、運動誘発アナフィラキシーが起こることがあります。
新型コロナワクチンの接種後に起こることがあるアナフィラキシーは、ワクチンに添加されているポリエチレングリコールという化学物質が原因だと考えられています。男性より女性のほうが、新型コロナワクチンによるアナフィラキシーを起こす頻度が高いのは、ポリエチレングリコールが一部の化粧品に含まれていることと関連している可能性があります。
ただ、新型コロナワクチン接種会場では、アナフィラキシーに対応する体制を整えています。接種後にアナフィラキシーを起こしたとしても、すぐに治療をすれば大事に至ることはありません。過去に薬や予防注射などでアナフィラキシーを起こしたことがあるなど心配な人は、より迅速に緊急対応ができる医療機関で接種するようにするとよいでしょう。
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