肺炎にアモキシシリン不使用、使用に非劣性示せず | 海外ジャーナル


5歳未満の非重症肺炎小児の治療において、治療失敗の頻度はアモキシシリンよりもプラセボのほうが高く、この差はプラセボの非劣性マージンを満たさないことから、現在の世界保健機関(WHO)の推奨は有効であることが、パキスタン・アガカーン大学のFyezah Jehan氏らが実施した「RETAPP試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年7月2日号に掲載された。WHOは、頻呼吸を伴う肺炎患者に経口アモキシシリンを推奨している。一方、この病態の治療にアモキシシリンを使用しなくても、使用した場合に対して非劣性である可能性を示唆するデータがあるという。

研究グループは、パキスタン・カラチ市のHIV感染がなく、マラリアの発生率が低い低所得地域の1次医療施設を受診した小児を対象に、頻呼吸を伴う肺炎の管理におけるプラセボのアモキシシリンに対する非劣性を検証する目的で、二重盲検無作為化対照比較試験を行った(英国国際開発省、英国医学研究評議会[MRC]、ウェルカム・トラストの共同グローバルヘルス試験計画[JGHT]などの助成による)。

対象は、頻呼吸を伴う非重症肺炎がみられ、WHOの基準を満たす生後2~59ヵ月の患児であった。被験者は、アモキシシリンシロップ(実薬対照)またはプラセボ(試験レジメン)を投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。

アモキシシリンは、WHOの総合的小児疾患管理(WHO-IMCI)の体重別の用量に従って、3日間投与された(体重4~<10kg:500mgを12時間ごと、10~<14kg:1,000mgを12時間ごと、14~<20kg:1,500mgを12時間ごと)。14日間のフォローアップが行われた。

主要アウトカムは、3日間の投与期間中の治療失敗とした。治療失敗は、患者が死亡またはWHOの定義による危険な徴候や下部胸壁の陥凹が発生した場合、患者が入院した場合、新規感染症や重篤な有害事象のため担当医が試験薬を変更した場合とされた。事前に規定された非劣性マージンは1.75ポイントだった。

2014年11月9日~2017年11月30日の期間に、4,002例が無作為化され、プラセボ群に1,999例(平均年齢16.5±13.9ヵ月、男児53.9%)、アモキシシリン群には2,003例(16.4±14.0ヵ月、51.1%)が割り付けられた(intention-to-treat[ITT]集団)。このうち、プラセボ群の1,927例(96.4%)およびアモキシシリン群の1,929例(96.3%)がper-protocol(PP)解析に含まれた。

PP解析では、治療失敗はプラセボ群が1,927例中95例(4.9%)、アモキシシリン群は1,929例中51例(2.6%)で発生した(群間差:2.3ポイント、95%信頼区間[CI]:0.9~3.7)。非劣性マージンを超えていることから、プラセボ群のアモキシシリン群に対する非劣性は示されなかった。この95%CIは、アモキシシリン群の優越性を示唆するものであった。ITT解析でも、同様の結果だった(4.8% vs.2.5%、群間差2.3ポイント、95%CI:0.9~3.6)。

探索的解析では、アモキシシリン群はプラセボ群に比べ治療失敗のリスクが低かった(オッズ比[OR]:0.52、95%CI:0.37~0.74)。治療失敗の他の独立の予測因子として、呼吸数(45回/分以上)、喘鳴、発熱、発熱の既往歴、下痢の既往歴、室内空気の質の悪さが挙げられた。

14日目までに、再発はプラセボ群40例(2.2%)、アモキシシリン群58例(3.1%)で認められた(平均群間差:0.9ポイント、95%CI:-2.1~0.3)。3日目までに、有害事象はプラセボ群63例(3.3%)、アモキシシリン群43例(2.2%)で発現した(1.0ポイント、-0.2~2.2)。両群1例(<0.1%)ずつが死亡した。また、1件の治療失敗の予防に必要な治療数は44例(95%CI:31~80)だった。

著者は、「これらの知見は、現行のWHOの推奨が妥当であることを示唆する」とまとめ、「1件の治療失敗を防ぐのに必要な治療数(44例)は比較的高く、この数値は多くの小児は抗菌薬の投与が不要である可能性を示唆するが、その一方で抗菌薬治療を必要とする重症のサブグループも存在する。これらを判別して標的治療を行うことで、不必要な抗菌薬使用を抑制できると考えられる」と指摘している。


・中耳炎 :肺炎球菌、インフルエンザ菌が主な原因。第一選択薬はアモキシシリンまたはクラブラン酸カリウム・アモキシシリン

マラウイのリロングウェで,胸部陥凹を伴う肺炎(持続期間が 14 日間未満の咳嗽,または呼吸困難に,明らかな胸壁の陥凹を伴う;年齢に比した多呼吸の有無は問わない)の小児に対するアモキシシリンの 3 日間の投与は,5 日間の投与よりも有効性が低いかどうかを明らかにするため,二重盲検無作為化対照非劣性試験を行った.胸部陥凹を伴う肺炎を有する生後 2~59 ヵ月のヒト免疫不全ウイルス(HIV)陰性の小児を,アモキシシリンを 1 日 2 回,3 日間投与する群と 5 日間投与する群に無作為に割り付けた.児は 14 日間追跡した.主要転帰は 6 日目までの治療失敗とした.3 日間レジメンの 5 日間レジメンに対する非劣性は,3 日間群の治療失敗例の割合が 5 日間群の 1.5 倍を超えない場合に示されるものとした.事前に規定した副次的解析には,14 日目までの治療失敗または再発の評価を含めた.

パキスタン・カラチの低所得地域にある一次医療センターで,小児を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照非劣性試験を行った.頻呼吸を伴う非重症肺炎の WHO 基準を満たす生後 2~59 ヵ月の小児を,アモキシシリン懸濁液 50 mg/mL(実薬対照)を 3 日間投与する群と,用量をマッチさせたプラセボ(試験レジメン)を投与する群に無作為に割り付けた.投与量は WHO の体重区分別に規定した(体重 4 kg 以上 10 kg 未満は 500 mg を 12 時間ごと,10 kg 以上 14 kg 未満は 1,000 mg を 12 時間ごと,14 kg 以上 20 kg 未満は 1,500 mg を 12 時間ごと).主要転帰は,アモキシシリンまたはプラセボの 3 日間の投与期間中の治療失敗とした.事前に規定した非劣性マージンは 1.75 パーセントポイントであった.

中等症又は重症の場合 アモキシシリン(AMPC)高用量内服 5~7 日間 ..

世界保健機関(WHO)は,頻呼吸を伴う肺炎患者に対して経口アモキシシリンを推奨しているが,試験のデータから,この病態の治療にアモキシシリンを使用しない場合も,使用した場合と比較して非劣性である可能性が示されている.

救急部門または入院病棟から退院(48時間以内)した市中肺炎の小児患者において、外来での経口アモキシシリン投与は、低用量群は高用量群に対して、また3日間群は7日間群に対して、いずれも非劣性であることが示された。英国・ロンドン大学セントジョージ校のJulia A. Bielicki氏らが、患児824例を対象に行った多施設共同2×2要因デザイン非劣性無作為化試験の結果を報告した。なお著者は、「今回の試験結果の解釈については、重症度、治療環境、抗菌薬投与歴、非劣性マージンの受容性について考慮する必要がある」と指摘している。JAMA誌2021年11月2日号掲載の報告。

研究グループは、英国28ヵ所、アイルランド1ヵ所の医療機関を通じ、市中肺炎の臨床診断を受け、救急部門・入院病棟からの退院後に外来でアモキシシリン治療を受けた月齢6ヵ月以上の小児824例を対象に試験を行った。

被験児を、アモキシシリン低用量(35~50mg/kg/日、410例)、または高用量(70~90mg/kg/日、404例)投与群と、両群について投与期間を3日間(413例)、7日間(401例)とする群に、それぞれ無作為化した。

主要アウトカムは、無作為化後28日以内の、呼吸器感染症に対する抗菌薬再投与(非劣性マージン8%)。副次アウトカムは、保護者の9項目の市中肺炎症状の報告に基づく重症度/期間、3項目の抗菌薬関連有害事象、肺炎球菌分離株のコロニー形成における表現型耐性などだった。

被験児824例が4群のいずれか1群に無作為化され、814例(年齢中央値2.5歳[IQR:1.6~2.7]、男児421例[52%])が少なくとも1回の試験薬投与を受けた。主要アウトカムは789例(97%)で入手できた。

低用量群vs.高用量群の主要アウトカムの発生率は12.6% vs.12.4%(群間差:0.2%[片側95%信頼区間[CI]:-∞~4.0])、3日間投与群vs.7日間投与群の同発生率はともに12.5%だった(0.1%[-∞~3.9])。投与量、投与期間ともに非劣性が示され、投与量と投与期間に有意な交互作用は認められなかった(p=0.63)。

事前に規定した14項目の副次アウトカムのうち、有意差が認められたのは、3日間投与群vs.7日間投与群の咳症状の期間(それぞれ、中央値12日vs.10日、ハザード比[HR]:1.2[95%CI:1.0~1.4]、p=0.04)と、咳による睡眠障害の期間(中央値4日vs.4日、HR:1.2[95%CI:1.0~1.4]、p=0.03)だった。

また、サブグループ解析での重症市中肺炎児の主要アウトカム発生率も有意差は示されなかった。低用量群17.3% vs.高用量群13.5%(群間差:3.8%[片側95%CI:-∞~10]、交互作用に関するp=0.18)、3日間投与群16.0% vs.7日間投与群14.8%(1.2%[-∞~7.4]、p=0.73)だった。

アモキシシリンの効果は?使用上の注意や飲み合わせについても解説

アモキシシリンは、特定の性感染症 (STI) の治療のために経口で服用する抗生物質です。 アレルギー(Allergies)