試験製剤:デキサメタゾンプロピオン酸エステル軟膏 0.1%「MYK」
ステロイド外用剤は、塗る量が少なすぎると十分な効果が期待できません。そのため、自己判断で塗る量を減らすのはおすすめできません。
ボアラ軟膏のべたつきが気になる場合は、べたつきの少ないボアラクリームや同等の効果が期待できるほかの薬に処方を変更することも検討いたしますので、診察時にご相談ください。
なお、薬局では患者様のご希望があっても軟膏をクリームに変更することができません。疑義照会が必要となりますので、ご承知ください。
軟膏を塗ることで通常良くなります。奥まで湿疹が広がっている場合には、ステロイドの入った点耳 ..
ボアラは虫刺されにも効果がありますが、あまったボアラを自己判断で使用するのは避けてください。
ステロイド外用薬は、症状や部位に応じた適切なものを使用しなければ、十分な効果が期待できないばかりでなく、副作用が生じる可能性が否定できません。「たかが虫刺され」と思うかもしれませんが、あまっている薬を使うのではなく、症状がひどい場合は受診して適切な治療を受けるようにしましょう。
ボアラと同じ成分の市販薬はありません。ただし、ボアラと同じストロングクラスの成分を含むステロイド外用薬は、ドラッグストアなどで購入できます。もっとも、成分が異なるため、まったく同じ効果が得られるとは限りません。
市販薬を5~6日ほど使用しても症状が良くならない場合、あるいはかえって症状が悪化する場合は使用をやめ、診察を受けるようにしてください。
コンベック軟膏は、帯状疱疹の皮膚症状や痛みを抑えるために処方される、非ステロイド性抗炎症薬です。 効果効能
妊娠中または授乳中の方、お子さま、ご高齢の方への使用に関して
医師の指導のもと、少量を短期間使う場合であれば特に問題はないとされています。しかし、催奇形性・発達障害・副作用などのリスクをゼロにすることはできません。
特に、大量または長期にわたる広範囲への使用や密封法などでは、ステロイド薬を内服した場合と同様な副作用があらわれるおそれがあるため注意が必要です。使用の際は、自己判断で使用量や使用範囲を増やしたり、長期間使用したりすることがないようにしましょう。
顔や陰部は皮膚が薄く、体のほかの部位に比べてステロイドの効果があらわれやすいのですが、その一方で副作用もあらわれやすくなります。ボアラを使用する際は、指示された期間を超えて長期間連用したり、自己判断で広範囲に塗布したりしないようにしましょう。
・診療報酬上の先発品が存在しない後発医薬品です。 ・一般名処方マスタ名※ デキサメタゾン軟膏0.1%
ボアラには軟膏とクリームの2つの剤型があり、皮膚の状態や部位などに応じた使い分けが可能です。
適応疾患は、・皮膚炎群、、痒疹群、、などで、通常は1日1~数回、適量を患部に塗布します。
ただし、軟膏・クリームとも、皮膚感染を伴う湿疹・皮膚炎には、原則として使用しません。やむを得ず使用する場合には、あらかじめ適切な抗菌剤や抗真菌剤による治療を行うか、これらとの併用を考慮します。
ボアラ(一般名:デキサメタゾン吉草酸エステル)は、血管収縮作用や抗炎症作用のあるステロイド外用剤で、皮膚の炎症を改善する作用があります。
ステロイド外用薬は強さにより5段階に分けられますが、ボアラの強さは上から3番目のストロングクラスです。同じ強さのステロイド外用薬としては、(ベタメタゾン吉草酸エステル)、ベトネベート(ベタメタゾン吉草酸エステル)、メサデルム(デキサメタゾンプロピオン酸エステル)、フルコート(フルオシノロンアセトニド)などがあります。
オルガドロン点眼・点耳・点鼻液0.1% (準先発品), 35.3円/mL
薬には効果(ベネフィット)だけではなく、副作用(リスク)があります。副作用をなるべく抑え、効果を最大限に引き出すことが大切です。このために、この薬を使用される患者さんの理解と協力が必要です。
成因:鼓膜は3層構造になっていて、外側は扁平上皮で、内側は粘膜で、中間層に放射状線維と輪状線維があって、鼓膜の形態を保っているわけですが、中耳炎で大きく穿孔したあと再生した鼓膜では、線維組織が消失して、瘢痕状のペラペラとした鼓膜になってしまいます。そうすると中耳の軽度の陰圧でも大きく陥凹して中耳の粘膜に張り付いてしまいます。最初は、耳管通気で中耳を陽圧にすると膨らみますが、炎症などを起こすと中耳の粘膜に線維性に癒着してしまいます。耳管機能障害がベースにあること多くあります。
予防:鼓膜線維をなるべく傷つけないことが大切ですので、鼓膜切開はなるべく避けたほうがよいと思います。急性中耳炎による大きな鼓膜穿孔を避けるために、中耳炎の適切な治療が大切でしょう。やむを得ず、鼓膜がペラペラの瘢痕になってしまった場合は、癒着を防ぐために、鼓膜を浮かしておくことが大切です。頻回の耳管通気も悪くはありませんが、できればバルザルバ手技を患者に教えて朝夕自分でやってもらうのが理想的でしょう。鼓膜チューブ挿入を勧めている書もありますが、鼓膜が菲薄化しているため、大きな鼓膜穿孔になってしまう可能性があるので勧められません。鼓膜が浮いている状態になっていれば、長い間に収縮して緊張のある鼓膜になっていくようです。
手術:鼓膜が線維性に癒着してしまった場合の治療は手術しかありませんが、鼓膜を剥離したあとの中耳の後壁に粘膜がないため、再癒着してしまうことが多く、手術成績は悪いようです。
平成23年10月18日 記
[PDF] デキサメタゾン眼軟膏 0.1%「ニットー」の生物学的同等性について
(この項については、本庄厳著: 滲出性中耳炎の正しい取り扱い (金原出版) を参考にしました)
①疾患名と成因について
滲出性中耳炎という名称は、いかにも中耳に炎症があるようで、適切な病名ではないと思う。私は、「耳管機能障害」という病名が適当と考えるが、ここでは通称として、滲出性中耳炎という病名を使用する。病因として①上気道の炎症と②耳管障害が考えられているが、耳管換気能障害部位が耳管咽頭口付近であるといわれていることから、鼻咽腔の炎症などにより、耳管咽頭口の粘膜が腫脹し、耳管障害が起こるものと考える。
また、小児では鼻漏が出ているときに、鼻をかむのを面倒くさがり、繰り返し鼻をすすっている光景をしばしば見かける。鼻をすすると中耳の空気が吸い出され、陰圧になって耳管の粘膜が引き込まれ、耳管が閉鎖してしまうことがあると思われる。
老人では、鼻咽腔の炎症がなくても滲出性中耳炎を発症することがあり、通気しても通過がかなり悪いことがある。加齢に伴って耳管機能が低下して汚染され炎症が起こって、耳管の粘膜が広範に腫脹して狭窄しているものと考える。
成人でも滲出性中耳炎を起こすことがあり、通気しても通過がかなり悪いことがある。この場合はアレルギー性鼻炎に伴う粘膜腫脹があるのかと考えている。
②症状
耳閉感、難聴、耳鳴が主な症状で大人では、「高い山に登ったときのような感じ、トンネルに入った感じ」と訴えることが多い。小児では、症状を訴えないことがあり、親が難聴に気付いて受診することが多い。
③診断
鼓膜をブリューニング拡大耳鏡で観察し、ゴム球で外耳道に加減圧を加えることにより、鼓膜の可動性を観察する。鼓膜に透明感があって、加減圧に伴い、前後に鋭敏に動くようであれば正常であるが、減圧時のみ前方に動くのであれば鼓膜が陥凹していると考えられ、また、小児によく見られる粘調な滲出液が溜まっている場合は、鼓膜表面にシワシワができる。成人によくみられる漿液性の貯留液の場合は、液面の上下がみられることもある。ただし、軽微な陥凹はティンパノメトリを行わないとわからないことがある。
検査は、まず、気道純音聴力検査を行い、難聴の有無を確認する。難聴がほとんどなければ、あまり積極的な治療は必要ないと思う。次にティンパノメリを行うが、この検査は、難聴が軽微であっても鋭敏に異常のパターンを示すことがある。骨道検査は通常は必要ないと思われるが、気導検査の値が悪くて、ティンパノメトリが正常の場合は、感音難聴や耳硬化症、鼓膜、耳小骨の異常が疑われるので、骨導検査が必要になる。
成人で、難聴がほとんどなく、ティンパノメトリもA型であるのに耳閉感を訴える場合がある。この場合は、耳管通気を試みるとよい。意外と耳管狭窄があることがある。
耳管通気は治療法であるとともに、滲出性中耳炎の診断にも役立つ。耳管狭窄があれば狭窄音、滲出液があれば断続音がするので、検査の結果と合わせて総合的に判断する。
通気後の鼓膜所見も大切である。鼓膜が膨らんでいれば通気度は良好であり、滲出液がある場合は、液面がはっきりしてくることが多い。
④治療
a)炎症の制御: 耳管咽頭口の炎症性腫脹を制御することが、大切である。副鼻腔炎が原因の場合は、抗生剤などの治療によりできるだけ治癒させる。アレルギー性鼻炎が原因になっている場合、内服薬及び点鼻液を使用して、腫脹を取り、常に鼻が通っている状態を維持するようにする。耳管咽頭口の炎症性腫脹が制御できなければ、滲出性中耳炎の治癒は困難である。
b)薬物治療: セファランチン、柴苓湯、ムコダインなどを使用したことがあるが、効果を認めたことはほとんどない。
c)耳管通気: 一般にポリッツェル球による方法と耳管カテーテルによる方法がある。効果の持続については、中耳の陰圧を目安にすると通気後数十分で元の陰圧に戻ってしまうというデータもあるが、時々、鼓膜を膨らませて、鼓膜の固着を防いだり、耳管を開存させるという意味で有効な治療法である。また、バルザルバ法により、自己通気ができるようになったら、朝夕行うよう指導すると、滲出性中耳炎が急速に治癒に向かう例がある。
d)鼓膜切開: 鼓膜切開を一度するだけで、滲出性中耳炎が治癒することは稀である。繰り返し、切開を行うと鼓膜の線維が切断され、瘢痕治癒が起こるので、私は鼓膜切開を行わない。
e)鼓膜穿刺: 穿刺孔は、ほとんど瘢痕なく治癒するので、繰り返し行ってもよい。また、穿刺孔より吸引することにより、かなり粘調な滲出液でも除去できるので、排液という意味では十分である。小児では、滲出液が溜まる度に1週間に1回づつ行ってもよいし、繰り返し行っているうちに滲出性中耳炎自体が軽快してくるものである。但し、患児の協力が必要である。
f)鼓膜チューブ留置術:
・適応: 成人の場合は、鼓膜穿刺を数回行ってもすぐに滲出液が溜まってしまう場合で、耳管機能の回復が得られにくいと思われる場合を適応としている。 小児の場合は、気長に通気療法と鼓膜穿刺を行っていると、時期がくれば自然治癒していくものであり、水泳に支障が出ること、将来チュープが抜けたあとに鼓膜が瘢痕化してしまうので、保存的治療で対処できない場合以外は原則として行っていない。
・使用するチュープ: 最近、専ら使用しているのは、KOKEN 鼓膜ドレイン Bタイプで、挿入しやすくするため、2ヶ所にハサミで切り欠けを入れて使用している。 KOKEN鼓膜ドレイン Cタイプを使ったことがあり、TDプランジャーを使えば簡単に挿入できるが、抜けやすく確実性がないので使うのをやめた。 T型チューブを使用したこともあり、専用の器具を使えば挿入は容易であるが、管が長いため、閉塞しやすく、倒れてしまってきれいに保持できなかったのでやめた。
・手技: 鼓膜の麻酔には小綿球を4%キシロカインに浸したものを5分くらい、鼓膜にあてておく。その後、綿球を除去して溜まっている4%キシロカインを吸引除去する。4%キシロカインが残っていて中耳に入ると、後でめまいを起こすことがあるので注意が必要である。この程度の麻酔で、患者さんは痛みを訴えることはほとんどなく、特殊な鼓膜麻酔液やイオントーホレーゼは必ずしも必要ないと考えている。
鼓膜切開は鼓膜の前下象限の中央を大き目に切開する。切開には専用の鼓膜切開刀があるが、私は21Gカテラン針にホルダーとして1mlシリンジを付けてメスの代わりにしている。極小鉗子で管の穴と外をつまんで、切開穴から内部フランジを挿入する。この時、切開が大きいほうが容易に挿入できるが、外部フランジが鼓膜の奥に入ってしまわないように注意して辺縁に引っ掛けておく。大きく切開しても、1週間程度で縮小してくるので、問題はない。
術後の感染予防としては、タリビット耳科用液を朝夕、1週間程度点耳してもらうようにしているが、これだけで十分のようである。
・効果: 中耳の滲出液は、主に耳管を通して鼻咽腔に排泄されていくようです。つまりチューブを通るのは空気だけである。チューブが閉塞しても心配はいりません。チューブが入ってる限り、空気はチューブと鼓膜の間の隙間から十分入っていくようである。
チューブは感染がない限り、ずっと入れておいて支障なく、患者さんも特に違和感を訴えることもない。数ヶ月入れておくと、滲出液が完全に排除され、滲出液による刺激がなくなるためか、耳管機能が回復してくることが多く、そうすればチューブが脱落したあとも再発はない。
・水泳について: チューブ挿入児でも、耳栓をすれば、水泳は可とする意見もありますが、小児の場合、耳栓使用が適切に行われることは少なく、プールの季節にはが中耳炎を起こしやすく困ります。
g)アデノイド切除術: 本庄厳によると、アデノイド切除術は、耳管咽頭口付近の炎症を改善させることにより、短期的には治癒までの期間を短縮することはできるが、3年後の治癒率では差がなくなっている、という。
⑤その他
a)難治化する要因:
・乳突蜂巣の発育が抑制されている。
・耳管が高度に狭窄している。
・鼻すすりで中耳に陰圧が生じる閉鎖不全耳管。
b)滲出性中耳炎の経緯: 3,4歳で発生頻度が最も高く、7,8歳頃から自然治癒の傾向を示し、10歳までには多くが治癒にいたる、という。
c)コレステリン肉芽腫の成立には高度に障害された耳管と、遷延する上気道炎とが同時に存在することが必須条件、という。
d)真珠腫性中耳炎との関連: 滲出性中耳炎の治癒遷延例と中耳真珠腫とでは、耳管障害と上気道炎のいずれの点でも共通点が多く、難治性滲出性中耳炎が真珠腫発症のハイリスクグループとみなしうるが、直接移行する例はごく少数にしか認められない、という。
e)癒着性中耳炎: たわみやすい鼓膜があり、これに耳管の閉鎖不全や鼻すすりによる中耳の陰圧化が加わることで、鼓膜の菲薄化、さらに癒着という不可逆的な病態に至るプロセスが考えられる、という。 たわみやすい鼓膜は何故できるか、遺伝性に鼓膜の線維が少ないのか、急性化膿性中耳炎が遷延し、大きな鼓膜穿孔を起こし、その治癒過程で瘢痕性の薄い鼓膜で閉鎖するのか、鼓膜切開を繰り返したため瘢痕治癒するためか、わからないが、医原性に瘢痕鼓膜を生じる原因をつくることは慎まなければならないと思う。
平成26年7月3日改訂
29 日目にさらに BSA を右耳に静注すると約 1 時間後再び炎症が右眼に現れ 6~24 時間
・5-FU軟膏による耳真珠腫の治療
真珠腫上皮の異常増殖を抑えるために5-FU軟膏を使用する。
真珠腫のdebris を清掃後、1回2~3ml の5-FU軟膏を2週間に1度、合計で2~5回にわたり、顕微鏡下に綿棒で耳真珠腫に塗布する。副作用はほとんどなく、難聴をきたした例は50人中1人もいない。(耳鼻咽喉科診療 私のミニマム・エッセンシャル 全日本病院出版会)
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好酸球性中耳炎について、その要点をまとめてみると
・成人発症型喘息・アスピリン喘息の患者に起こりやすい。
・好酸球性副鼻腔炎を伴うことが多く、鼻腔粘膜・鼻茸に好酸球の著しい浸潤がある。
・発症形態としては
1.鼓膜膨隆型: 喘息の増悪時期に一過性に鼓膜の膨隆を生じ、切開すると膠状の貯留液と肉芽が鼓室内に充満している。
2.急性中耳炎型: 鼻を強くかんだり、上気道炎罹患のとき、急性中耳炎として発症し、両側の滲出性中耳炎に移行し、中耳貯留液は初期には漿液性であるが、まもなく膠状になる。
・中耳貯留液からは多くの好酸球浸潤が観察される。
・初期には伝音難聴であるが、広範かつ高度の肉芽形成を生じると、骨導閾値が上昇する。飯野ゆき子によると「高音域から障害される点から、内耳窓を介して好酸球性炎症あるいは細菌感染による炎症産物が内耳に到達した結果生じるものと考えられる」とのことである。
・患者数は、2004年の調査から推計すると、人口10万人当たり約0.12人/年。(Nikkei Medical 2010.3)
・治療は鼓膜膨隆のみの場合は、プレドニン20~40mgより漸減し1週間前後で終了できるが、肉芽形成が生じると難治である。
○好酸球性中耳炎の診断基準(好酸球性中耳炎研究会) 2010.2.10
・大項目
中耳貯留液に好酸球が存在する滲出性中耳炎または慢性中耳炎
・小項目
①にかわ状の中耳貯留液
②副腎皮質ステロイド以外の治療に抵抗性
③気管支喘息の合併
④鼻茸の合併
大項目・小項目2つ以上に該当するする場合は、確実例とする。
ただし、Churg-Strauss症候群、好酸球増多症候群を除く。
炎 1 時間後に 20mg を両耳介外側に塗布した。 耳浮腫量(n=12)
1. コレステリン肉芽腫症(高度耳管機能障害による中耳炎)
耳管機能障害の中で耳管の器質的障害、特に耳管胸狭部で耳管の内腔が高度に狭窄している場合に生じる。
通常1側の耳閉感、難聴、ときには茶褐色の耳漏を主訴に受診する。鼓膜所見で青色鼓膜を呈することが多い。
2. 結核性中耳炎
結核菌の感染による中耳炎である。
3. 悪性外耳道炎
通常であれば外耳道皮膚に限局している細菌や真菌の感染が、宿主の易感染性により軟骨、骨などの組織を進行性に侵す外耳道炎である。
4. 好酸球性中耳炎
主に気管支喘息に合併し、極めて粘調な中耳貯留液を有するのが特徴である。
5. ANCA関連血管炎性中耳炎
好中球細胞質抗体(AntiNeutrophil Cytoplasmic Antibody)が陽性となる壊死性血管炎が本体である。
中耳炎型としては滲出性中耳炎型と肉芽型があり、前者が約6割を占める。
(飯野ゆき子:日自費118、P1160-1163)
通常、0.1%点眼液として 1 日 3~4 回、1 回 1~2 滴宛点眼す
①排膿
浸潤期においては、まだ膿の貯留はないので、抗生剤の内服で速やかに治癒に向かう。
化膿期においては、排膿を行うことが望ましい。鼓膜切開を行うのがよいとされているが、乳幼児では困難であり、また、中耳炎が治癒したあと、鼓膜の線維が切断されるため、瘢痕治癒する可能性があるので、私は行わない。鼓膜穿刺針にディスポの1mlシリンジを付けて鼓膜穿刺し、余裕があれば膿を吸引して細菌検査に提出する。余裕がなければ穿刺だけでもよく、あとでローゼン式吸引管でよく吸引する。穿刺孔は小さくても、排膿が続いている間は結構閉鎖しないものである。ただ、乳幼児では穿刺も困難であることが多いので、外耳道を5倍希釈イソジンで消毒して、リンデロンVG軟膏塗布のみにとどめることが多い。
すでに穿孔している場合は、膿を細菌検査に提出し、ローゼン式吸引管でよく吸引した後、5倍希釈イソジンで消毒して、リンデロンVG軟膏塗布をしている。
②抗生剤の使用
急性中耳炎の起炎菌は、によると、インフルエンザ菌(27.4%)、肺炎球菌(24.1%)、黄色ブドウ球菌(17.0%)、CNS(10.8%)であったということですが、インフルエンザ菌と肺炎球菌とモラクセラ・カタラーリスが三大起炎菌とされている。モラクセラ・カタラーリスは直接病原性はないが、ペニシリン系抗菌薬を分解して、効果を弱めるといわれている。ブドウ球菌は外耳道に常在する菌で、検体採取の際の汚染と考えられている。
・肺炎球菌では、PSSP:40.4%、PISP:39.7%、PRSP:19.9%とペニシリン耐性菌が59.6%に増えている。
・インフルエンザ菌では、BLPAR:6.1%、BLNAR:23.1%とABPC耐性菌が増加している。
・肺炎球菌に対しては、フロモックス、メイアクト、オラペネム、ニューキノロン剤が有効である。
・インフルエンザ菌に対しては、ニューキノロン剤≫メイアクト>フロモックス=オラペネムが有効である。
・点耳抗生剤として、タリビット耳科用、ベストロン耳鼻科用などがあるので、鼓膜穿孔がある場合に併用すると病巣に高濃度の抗生剤が入るので、有効である。但し、鼓膜穿孔がない状態では点耳液を使用しても、中耳ににはほとんど到達しないと思われるので無駄と考える。
③再感染の予防
急性中耳炎は元に鼓膜穿孔がなかった場合は、ほぼ100%が鼻腔→耳管経由の感染であり、先発する副鼻腔炎の治療が大切である。鼻処置として、ボスミン、キシロカインの噴霧、鼻漏の吸引をしっかりと行い、鼻腔の換気をよくして耳管機能の回復を図る。鼻閉がある場合には、血管収縮剤の点鼻液(トラマゾリンなど)を処方し、鼻閉時に点鼻し、鼻の通りをよくしてから静かに鼻をかむよう指導する。鼻すすりもよくないので、注意する。
付1)学会の小児急性中耳炎ガイドラインについては、をご覧ください。
付2)私の急性中耳炎治療フロー
付3)成人の急性化膿性中耳炎
成人は、元来、急性化膿性中耳炎にはなりにくいものである。理由として成人の耳管は狭く、長いため、鼻咽腔から、細菌が侵入しにくいとされている。
成人が急性化膿性中耳炎になる場合、耳管機能障害がベースにあることが多い。その原因として、風邪に伴う急性鼻咽腔炎、アレルギー性鼻炎があるが、耳管開放症が関係していることがあるので、注意を要する。こういった基礎疾患がある状態で、強く鼻をかんだり、気圧の変化に遭うと中耳に細菌が侵入しても排泄されず、化膿性炎症を起こしてくると考えられる。
治療法は小児の場合と同様であるが、積極的に鼓膜穿刺、排膿していくとよいと思う。成人の急性化膿性中耳炎では、疼痛を強く訴えることが多く、耳管機能障害がベースにあるため、治癒に時間がかかることがあり、また、滲出性中耳炎に移行していくことが多いので厄介であるが、その時の状態に応じて適切に対処していくことが必要であろう。
最近、好酸球性中耳炎という病態があることが指摘されており、大人の中耳炎ではそういった病態になっていないか、注意を払う必要がある。
飯野ゆき子先生は「大人の方が(急性中耳炎に)かかっても意外と早く治るという特徴があります」と言っていますが、
また、松谷幸子先生によると、「成人ではムコイド型肺炎球菌による急性中耳炎(ムコーズス中耳炎)が重症化しやすく、激烈な痛み、多量の耳漏があり、骨導値の低下を伴うことが多い。」そうです。
付4)成人急性中耳炎での骨導低下
急性中耳炎の経過中に骨導閾値上昇や、めまいなどが出現することがある。鼓膜の発赤や傍流、混濁、外耳道の発赤、腫脹がほぼ全例に認められる。耳漏は漿液性であることが多く、鼓膜切開すると、著しい中耳粘膜の腫脹と漿液性耳漏が多く認められる。
聴力検査では聴力低下の程度は軽度~中等度が多く、高音域の骨導閾値上昇が著明である。
骨導閾値上昇については、炎症が内耳に波及し、内耳炎あるいは炎症性サイトカインなどによる内耳障害が原因であるとの考えが一般的であるが中耳腔内の貯留液や肉芽などの存在による見かけ上の骨導閾値の上昇とする考えもある。起炎菌としてはムコイド型肺炎球菌が比較的高頻度に検出される。
治療としては、見かけ上の骨導閾値上昇を除外するだけではなく、内耳障害因子の量を減らすという目的から、鼓膜切開、排膿、場合によっては鼓膜チューブ留置を行い頻回に洗浄するなどの手段を行い、感音難聴に対しては突発性難聴に準じた治療(ステロイド薬、循環改善薬、ビタミン剤、ATP製剤など)を行うことが推奨される。ステロイドの漸減投与が行われることが多いが、基礎的検討からは現在のところデキサメタゾンが推奨される。
予後は、抗菌薬やステロイドの投与で聴力は正常化している場合が多く、治癒率は40~90%と予後は比較的良好である。中耳炎による感音難聴は発症後1~2ヶ月の経過で治癒する症例が多いといわれている。聴力型と聴力の経過では高音障害型は平均16日間で治癒しているのに対し、水平型や他の聴力型は平均42日間の治癒期間を要し、遷延傾向を示したとの報告もある。治療開始時期については、発症から治療開始までの期間が7日以内の症例に治癒例が多いとの報告もあり、早期に治療開始することが重要である。
(工田昌也:MB ENT.192::15-21,2016 より要約)
平成29年2月2日改訂