行動がメラトニンの投与によって回復する(Feng and Bass, 2016)。これらの
われわれは,カフェインが培養細胞の時計周期長を伸長することを見いだし,実際に,マウスにカフェイン溶液や市販のインスタントコーヒーを飲用させると,活動リズムの周期長が伸長することを明らかにした(.その後,他の研究グループがヒトにおける効果も検証し,エスプレッソ2杯分のカフェイン摂取により,メラトニンの分泌開始時刻が遅くなることから,やはり体内時計に作用することが示唆されている(.また,シナモンに含まれるケイヒ酸は,カフェインとは反対に,体内時計の周期長を短縮させることが明らかになっている(.マウスの培養神経細胞において概日時計の周期長を短縮し,マウスへの継続投与により概日活動周期長が短縮する.
知見から、メラトニンは昼行性、夜行性を問わず生物全般において夜に行われ
栄養成分という観点に広げると,高脂肪食(,高食塩食(,あるいは,スターチの消化性(なども体内時計に影響することが明らかになっている(.マウスに高脂肪食を摂取させておくと,明暗の摂餌リズムが減衰する.通常,マウスは夜行性であるため,1日の食餌の8割ほどを暗期に摂食するが,高脂肪食の場合,この夜行性の割合が減弱する(本来は寝ている時間帯に起きて摂食する割合が増加する).この実験を明暗周期がない恒暗条件で実施すると,活動リズムの周期長が伸長する.つまり,中枢時計が伸長していると考えられる.高脂肪食が中枢の概日時計を引き伸ばすことは,摂食行動やエネルギー代謝の調節とも関連しており,この部分を標的とした時間栄養学的な肥満予防戦略も報告されている.一つは,食事時刻を活動期のみに制限する時間制限給餌である.マウスに高脂肪食を自由に与えると,体重はどんどん増加するが,活動期の8~12時間に制限して与えた場合では,摂餌量は減らずに体重増加が抑制される(.また,フラボノイドのノビレチンは,概日時計の振幅を増強することにより,高脂肪食による肥満を抑制している可能性が示唆されている(.
さらに,最近,筆者らは,トリテルペノイドの中に,体内時計の調節作用が非常に強いものがあることを見いだした(.トリテルペノイドは植物などに広く含まれている化合物で,多彩な構造とさまざまな生理活性が知られている.一般的には,抗炎症作用を有するものが多く,食用や薬用植物として利用されているものも多い.たとえば,バナバの葉に含まれるコロソリン酸は,インスリン様の血糖上昇抑制作用が知られており,古くからバナバ茶として糖尿病の民間療法に使われてきた.最近では,機能性表示食品としても利用されている.また,甘草に含まれるグリチルレチン酸は,抗炎症薬として利用されている.また,オリーブなどに多く含まれるマスリン酸は,関節炎予防効果などが報告されており,やはり,機能性表示食品としても利用されている.われわれはこれらの化合物を培養細胞に添加し,概日時計の変化を解析した.すると,コロソリン酸のみで特異的に概日時計の位相シフト作用が確認された.さらに,構造が大きく異なるトリテルペノイドも含めて15種類の化合物について試験したところ,ククルビタシンBとセラストロールについても位相シフト作用を確認した.コロソリン酸の有効濃度は5 μM程度,セラストロールは0.5 μM程度,ククルビタシンBは0.1 μM程度であり,これまでのフラボノイド類による作用の報告濃度(10~200 μM程度)と比較すると,かなり低濃度で作用することがわかる.実際に,これらの化合物を利用し,培養細胞の概日時計の位相を前後に調節することが可能であるし(),個々の細胞の時計が同期せずに打ち消し合って全体としてのリズムが検出できない状態(体内時差ボケのモデル)に,これらの化合物を添加すると,時計の位相がリセットされて同期し,全体としての概日リズムを回復させることもできる().さらに,セラストロールに関しては,の発現リズムの振幅を増加させる作用と,周期長を短縮させる作用も確認された().薬理化合物ライブラリーのスクリーニングにおいても,概日時計を短縮させる化合物の報告は数えるほどしかなかったことから,貴重な活性を有する化合物である.実際,この一連の試験で27種類のトリテルペノイドを試験したが,周期長を短縮させたのは,セラストロールのみであった.また,セラストロールには,レプチン感受性を回復させる作用や,メダカの冬季うつ様行動を抑制する作用も報告されており,概日時計との関連も含めて非常に興味深い化合物である(.ただし,生薬として使われる薬用植物には含まれているが,食経験は十分ではないと考えられることから,食品よりも医薬品としての応用が期待される.
メラトニン(中),コルチゾルリズム(下)の典型例.食事時刻固定群(左 ..
時計遺伝子のプロモーターにルシフェラーゼをつなげたレポーターを発現させ,U2OS細胞(ヒト)あるいは3T3細胞(マウス)の培養リズムを可視化.矢印のタイミングでトリテルペノイドであるコロソリン酸(A, B),あるいは,セラストロール(C, D)を添加した例.細胞への添加タイミングにより,位相を前進(A),あるいは,後退(B)させることができる.セラストロールはリズムの振幅を増加させ,周期長を短縮させる(C).個々の細胞の時計が同期せずにバラバラでリズムを打ち消し合っている状態(乱れた生活習慣を模倣)に,コロソリン酸やセラストロールなどの時計をリセットする成分を添加すると,細胞の時計が同期し,全体の概日リズムが回復する(D).
それでは,実際に食品に含まれる成分について解説する.筆者は,その観点からポリフェノールや香辛料成分など,手当たり次第,培養細胞に添加して調べたことがある.その中で,レスベラトロールが時計遺伝子の発現を一過的に変化させ,時計位相を変化させることを見いだした(.これは,機能性食品成分によって体内時計を調節できるかもしれないというコンセプトの研究としては,世界で最初期の論文である.その後,フラボノイド類には体内時計の位相変化や周期長を伸長させるものが多くあることが明らかとなった(.少なくとも培養細胞レベルでは,これらの食品成分の添加により,時計位相をコントロールすることは可能である().また,フラボノイドなどによるエネルギー代謝調節作用について,時計遺伝子を介した作用の存在が明らかになりつつある(.
[反転磁界および誘導渦電流による松果体N-アセチルトランスフェラーゼの夜行性活動およびメラトニン含有量の抑制] med./bio
同様の考え方を末梢時計ネットワークに拡張すると,位相の同調は細胞間の直接的な連絡というより,インスリンやグルココルチコイド,体温変化,酸素濃度変化などのリズムに個々の細胞が合わせるようにして同期している.したがって,これらのシグナル経路を模倣するような化合物により,末梢時計を調節・制御することが可能である().このように,概日時計を調節する化合物は多数存在しており,ケミカルスクリーニングは概日時計の分子メカニズムの理解や制御の仕組みについてさまざまな知見を提供してくれている.なお,上記のスクリーニングでは,概日時計の機能を変化させる化合物の探索を目的としていることから,周期長や振幅が注目されているが,概日時計の位相を調節するという観点からは,フォルスコリンのように位相を一過的に変化させる化合物でも十分である.その点では,たとえばcAMPのシグナルを回すことにより,時計遺伝子の一過的誘導を促すものも標的となりうるし,細胞内NAD+経路,ペントースリン酸回路,活性酸素に関連したのシグナル経路,あるいは,低酸素と関連したのシグナル経路なども概日時計に作用することが報告されている(.既存の報告よりも,ずっと多くの化合物が位相調節作用を有するはずであり,食品成分への応用展開も現実的である().
健康科学の研究者としては,薬や食品を上手に使って体内時計を調節・制御したいところである.個体丸ごとの体内時計を動かすとなるとハードルが高いが,上述のとおり,培養細胞の概日時計であれば化学的な刺激でリズムを調節することは比較的容易である.これまでに,ケミカルスクリーニングによって,概日時計に作用する化合物は多数見つかっている.たとえば,理研のグループが,マウスとヒトの培養細胞を利用し,1,260個の薬理化合物についてスクリーニングを行った実験では,周期長を大幅に伸ばすものが10個,それ以外に有意に伸ばすものが14個,有意に縮めるものが4個あったことを報告している(.周期長を顕著に伸ばす化合物の多くがカゼインキナーゼε/δ(ε/δ)の阻害活性を有していた.もともと,εの変異体ハムスターは概日リズムの周期長が短いことが知られており,時計周期長を調節する標的の一つとして,このタンパク質の活性制御が有効な手段であることがわかる.また,カリフォルニア大学のグループの報告によると,1,280個の薬理化合物のスクリーニングから,周期長を変化させるものが11個見つかり,やはり時計遺伝子の制御にかかわることが知られていたβというキナーゼの阻害剤を含んでいた(.その後,約12万個の化合物についてスクリーニングを実施し,δ, α, などのキナーゼが時計の周期長に影響を及ぼすことが確認され(,時計タンパク質のリン酸化状態によって周期長が制御されていることが浮き彫りになった.さらに,6万個の化合物のスクリーニングから,周期長を伸長する新たな標的として,時計遺伝子のに直接的に作用する化合物(KL001~003)が見つかった(.その後,名古屋大学のグループが合成化学を駆使して,この化合物の類縁体の効果を検証し,周期長を短縮する化合物の合成に成功している(.また,ドラッグリポジショニングの観点から,既存の承認薬ライブラリーを使ったスクリーニング実験もあり,1,100の承認薬のうち,周期長に影響するものが5%(59個;伸ばすものが46個,縮めるものが13個)見つかったことを報告している(.そのなかで周期長を短縮させた,デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)については,マウスの飼料に0.5~1.0%混ぜて摂取させることで,実際に行動リズムの周期長が短縮されることを確認している.ちなみに,DHEAはサプリメントとして入手できる国もある.
方、夜行性齧歯類では運動も同調因子として働く。最近、ヒトでも深夜の身体 ..
また,体温や組織酸素濃度の日周変動も末梢時計の時刻情報となりうる(.筋肉の時計は,食事スケジュール(インスリン)も重要であるが,活動スケジュール(体温,酸素濃度)の影響も強く,両者が乖離するような条件においては,活動スケジュールに合わせた時刻情報をもつ場合もある(.多くの末梢組織においては,このように複数の時刻情報がシグナルを入れており,組織の特性に応じて各因子の影響力が異なっている.つまり,食事リズム,活動リズム,体温リズムなどがすべてそろっている場合は,末梢組織全体で同じような時刻情報をもち,個体全体としても大きな日周リズムを生み出すが,因子間の競合が起こるような生活(朝食欠食や深夜の食事など,活動時刻と食事時刻がずれる生活が典型)をしていると,組織によって時刻情報が乖離してしまう.このように,体内で時差ボケが起こったような状態では,臓器間あるいは細胞間での時間的分業や連携がスムーズに進まなくなり,生理機能が低下する.これが長期的に続くと,エネルギー代謝が落ちてメタボになったり,脳機能や精神状態が不安定化したり,免疫機能が低下したりすることで,生活習慣病や疾病にかかりやすい身体になってしまう(.
末梢組織においても,同様の時計位相調節機構が保持されている.たとえば,グルココルチコイドのシグナルが入ると,が誘導され(,インスリンのシグナルが入るとが誘導され(,時計の位相が調節される.したがって,マウスにストレスがかかるようなハンドリングをすると,ストレスホルモンであるグルココルチコイドが上昇し,末梢時計の位相が変化する(.同様に,食事スケジュールを変化させると,インスリンが末梢時計に作用する時間帯が変わるので,末梢時計の位相が動く.つまり,早朝の食事は末梢時計を前進させる働きをもち,夜遅い食事は末梢時計を後退させる.末梢時計は,インスリンやグルココルチコイドなどの時刻因子の濃度変化に合わせて時計位相が調節されているため,食事時刻や活動時刻に合わせた時刻情報となる.
Anonymouz 夜行性 (100回嘔吐Remix) feat
体内時計は,日周変動する地球環境に合わせて,活動すべき時間帯と休息(待機)すべき時間帯を予測して効率化するためのシステムである.したがって,植物のように光合成によってエネルギーを獲得する生物の場合は,光を基準とする体内時計をもっている.一方,動物の場合はエネルギー源が他の生物(餌)であることから,餌や天敵の活動リズムにも依存した時計が必要である.そこで,絶対的な時刻情報である光に同期する中枢時計と,相対的な時刻情報である食事時刻(あるいは活動時刻)に同期する末梢時計をもつように進化した.中枢時計は視神経からの入力を受ける視交叉上核に存在し,活動/睡眠リズムを支配している.光に依存した時刻情報であることから,夜行性動物でも昼行性動物でも同じ時計位相をもっている.一方で,末梢組織の時計は食事タイミング(あるいは活動タイミング)に依存するため,夜行性動物と昼行性動物とで反対の時刻情報(位相)となる.このように階層的な時計システムをもつことにより,エネルギーが獲得できる活動期と,そうでない休息期の到来を事前に予測し,エネルギー配分をスケジュールできる仕掛けとなっている.
例えば夜行性の動物などは、活動する夜に体温が低くなり、休息をとる朝から日中 ..
光や食事といった外部の時刻情報に合わせるために,個々の概日時計は時刻調節機能をもっている.まず,古典的に知られている光シグナルに対する視交叉上核の反応をで説明する.光によって興奮した視神経の終末からグルタミン酸が放出され,視交叉上核の神経細胞がそのシグナルを受け取る.グルタミン酸受容体を介して,細胞内でcAMP濃度が上昇すると,cAMP応答配列(CRE)をプロモーターにもつ時計遺伝子の発現が一過的に誘導される.これが,の概日リズムにおける上昇フェーズに起きれば時計位相は前進し,下降フェーズに起きれば遅延する仕組みとなっている.具体的には,日の出前の光は時計を前に動かし,日没後の光は時計を後ろに動かすことになる.や(, )などの時計遺伝子は,刺激によって一過的な発現誘導が起こる遺伝子(immediate early gene)であり,刺激に応じて時計位相を前後に調節する機能をもたらしている.ちなみに,これを薬剤で実験的に模倣することは比較的容易であり,たとえば,培養細胞にcAMPを上昇させる薬剤であるフォルスコリン(アデニル酸シクラーゼの阻害剤)を作用させると,が一過的に誘導され,時計位相が調節される.すなわち,の上昇フェーズに薬剤を添加すれば位相は前進し,下降フェーズに添加すれば位相を後退させることが可能である.
本来、ヒトは夜行性ではなく、日が沈むと暗い中でじっと身を潜めていたのに ..
ここで言う体内時計とは,概日リズム(circadian rhythm;サーカディアンリズム)のことである.ラン藻,カビ,植物,動物などに備えられた約24時間周期の内因性リズムで,動物の場合,時計遺伝子と呼ばれる10~20種類程度の遺伝子群によって,細胞レベルのリズムが形成される.時計遺伝子の(, , )やは転写レベルで24時間の周期変動をしている().時計遺伝子によっては,タンパク質や修飾(リン酸化やアセチル化)のレベルで24時間変動しているものもある.これらの時計遺伝子の下流に位置する分子は,必然的に24時間の活性制御を受ける.たとえば,とは転写調節因子であり,プロモーター中のE-boxと呼ばれる配列に結合して転写を促進する.この転写制御を受ける遺伝子は,活動期の開始時刻付近に発現がピークを向かえる概日発現リズムを示す().同様に,別の時計遺伝子であるαやは,RRE配列の転写を制御しており,この配列をプロモーターに含む遺伝子は,活動期の終盤に発現ピークが来るような概日リズムをもつ.エネルギー代謝は,活動期と休息期でダイナミックに機能を変化させる典型であり,これは,糖新生や脂質代謝にかかわる遺伝子(特に代謝経路の律速段階に位置する遺伝子)が,E-boxやRRE配列による制御を受けているからである.
一方、夜行性の動物にとっては、活動するシグナルとして働きます。
Key words: 概日リズム; 時計遺伝子; 時間栄養学; 機能性食品; ケミカルバイオロジー
性の夜行性リズムを維持している。 4)日時計システムの個体発生
ダイエットをしたければ,朝食を抜くよりも夕食からその分のカロリーを減らした方が効果的である.血糖コントロールを良くしたければ,夕方早めの時間帯までに3食を終えるのが良い.がんを減らすには,十分な絶食時間を設けることである.これらは,時間栄養学研究が明らかにしつつある機能的食事法である(.では,なぜそれほどまでに「食べる時間」が身体に影響するのであろうか.われわれの身体システムは体内時計に従った時間的分業から成り立っており,エネルギー代謝や免疫系を代表に,各種インプットやアウトプットに適した時刻が存在するからである.したがって,食品・栄養学研究においても,時計リズムの視点が欠かせない.
ここで合成されるホルモンがメラトニンで、合成・分泌は夜に行われる。 ..
「自然のリズムに合わせた十分な睡眠は」生命維持・健康のために必要で体内時計機構によって、全ての人が、昼活動し、夜眠るリズム生活をしています。しかし、昼間は意識があって、活動していますが、いったん眠りに入ると、意識はありません。しかし、この意識のない間に疲労が回復し、明日への活力を蓄えます。睡眠は脳波で見て、90分周期の5段階に分けられ、入眠→(1段階→2段階→3段階→4段階→5段階)→ここまでをほぼ5回ほど繰り返して目覚めます。1〜4段階を脳波の波形から徐波睡眠期と言われ、5段階は覚醒時に似た波形ですが、早い眼球運動を伴い、レム睡眠期といわれています。このレム睡眠期に夢をみています。この睡眠の前半の徐波睡眠時に脳下垂体から成長ホルモンが分泌されます。この現象は他の動物では認められずヒトに特徴的であります。この成長ホルモンは子供では文字通り体の成長を促進、成人では損傷した細胞・組織の修復をし体調を良好に維持します。心の面でも記憶や学習の効果を向上します。一生懸命に勉強した後で、どれだけ記憶として残っているかは、学習前後で十分な睡眠がどれだけとれたかによります。特に睡眠中の徐波が重要な働きをすると言われています。さらに、思考・判断力も高め、「アイディアの閃き」などの創造力もよくなります。
夜の10時ぐらいから朝の6時ぐらいに分泌されるメラトニンが知られている。 ..
「親時計(SCN)」のヒトでの機能は睡眠覚醒のリズム形成にあります。
睡眠中枢は前部視床下部の腹外側視索前野(VLPO)にあり、抑制系GABA神経とされている。一方、覚醒中枢は後部視床下部の脳弓付近のオレキシン神経と結節乳頭核に起始するヒスタミン神経の2つの覚醒系の神経細胞が局在して覚醒中枢をなしています。日中の太陽光を受けて覚醒中枢が活性化し、ヒトは活発に活動し、疲労物質が体内に溜り睡眠中枢が活性化され、ヒトは眠りに入って休息し次の日の活動に備えます。この時に太陽光のなくなる夜間のみに松果体から分泌されるホルモンの「メラトニン」が視交叉上核の時計細胞にあるメラトニン受容体(MT1)に働き入眠を誘い深い睡眠(徐波睡眠)をもたらします。もう一つのメラトニン受容体(MT2)に働き時計の針を前進させます。最近このメラトニン受容体作動剤ラメルテオン(ロゼレム・武田)が実用できるようになっております。この時計の針の前進後退すなわち生体リズムの位相の前進後退は、地球の自転リズムの24時間と関係し、ヒトなど昼行性動物は25時間、ネズミなど夜行性動物は23時間の体内時計位相になっています。そして、朝の光を浴びることによって位相が前進し24時間に調整されます。この位相のずれ現象は海外旅行した時の「時差ボケ」で実感できます。また、夕方から夜にかけて光を浴びると位相が1時間後退し、地球の自転と2時間の位相差となり夜間に光を浴びる乱れた生活や夜勤・交代勤務を続けると6日間で地球の位相と逆転することになります。
この変化は生物の昼行性・夜行性を問わず暗期に顕著であり、主観的夜
しかし、最近になって、「第3の時計(腹時計)」の存在が明らかにされました。
時が経てば空腹を感じて食べる食事も体内時計の針を調節する役割をしています。空腹時間が長いほど針あわせの影響が大きいことが分かってきました。したがって、朝食の効果が最も大であります。2008年にこの腹時計の中枢(親時計)が視交叉上核(SCN)の上方にある視床下部背内側核(DMH)にあることが遺伝子操作実験から明らかにされました。これらの中枢・抹消時計の間の連携は自律神経・免疫・内分泌の各調節系によってなされています。
「親時計(SCN)」のヒトでの機能は睡眠覚醒のリズム形成にあります。
睡眠中枢は前部視床下部の腹外側視索前野(VLPO)にあり、抑制系GABA神経とされている。一方、覚醒中枢は後部視床下部の脳弓付近のオレキシン神経と結節乳頭核に起始するヒスタミン神経の2つの覚醒系の神経細胞が局在して覚醒中枢をなしています。日中の太陽光を受けて覚醒中枢が活性化し、ヒトは活発に活動し、疲労物質が体内に溜り睡眠中枢が活性化され、ヒトは眠りに入って休息し次の日の活動に備えます。この時に太陽光のなくなる夜間のみに松果体から分泌されるホルモンの「メラトニン」が視交叉上核の時計細胞にあるメラトニン受容体(MT1)に働き入眠を誘い深い睡眠(徐波睡眠)をもたらします。もう一つのメラトニン受容体(MT2)に働き時計の針を前進させます。最近このメラトニン受容体作動剤ラメルテオン(ロゼレム・武田)が実用できるようになっております。この時計の針の前進後退すなわち生体リズムの位相の前進後退は、地球の自転リズムの24時間と関係し、ヒトなど昼行性動物は25時間、ネズミなど夜行性動物は23時間の体内時計位相になっています。そして、朝の光を浴びることによって位相が前進し24時間に調整されます。この位相のずれ現象は海外旅行した時の「時差ボケ」で実感できます。また、夕方から夜にかけて光を浴びると位相が1時間後退し、地球の自転と2時間の位相差となり夜間に光を浴びる乱れた生活や夜勤・交代勤務を続けると6日間で地球の位相と逆転することになります。「自然のリズムに合わせた十分な睡眠は」生命維持・健康のために必要で体内時計機構によって、全ての人が、昼活動し、夜眠るリズム生活をしています。しかし、昼間は意識があって、活動していますが、いったん眠りに入ると、意識はありません。しかし、この意識のない間に疲労が回復し、明日への活力を蓄えます。睡眠は脳波で見て、90分周期の5段階に分けられ、入眠→(1段階→2段階→3段階→4段階→5段階)→ここまでをほぼ5回ほど繰り返して目覚めます。1〜4段階を脳波の波形から徐波睡眠期と言われ、5段階は覚醒時に似た波形ですが、早い眼球運動を伴い、レム睡眠期といわれています。このレム睡眠期に夢をみています。この睡眠の前半の徐波睡眠時に脳下垂体から成長ホルモンが分泌されます。この現象は他の動物では認められずヒトに特徴的であります。この成長ホルモンは子供では文字通り体の成長を促進、成人では損傷した細胞・組織の修復をし体調を良好に維持します。心の面でも記憶や学習の効果を向上します。一生懸命に勉強した後で、どれだけ記憶として残っているかは、学習前後で十分な睡眠がどれだけとれたかによります。特に睡眠中の徐波が重要な働きをすると言われています。さらに、思考・判断力も高め、「アイディアの閃き」などの創造力もよくなります。
われわれの「生活リズムが乱れる、すなわち、「生体リズム」が乱れると下記のような病気をもたらすことが遺伝子操作実験から明らかにされています。
2012)では、内因性メラトニンの分泌の有るマウスにて MT2 受容体を欠損させ
植物「おじぎそう」の時計機構の存在はアレキサンダー大王の時代から記載があります。
1972年、哺乳動物の脳の視交叉上核(SCN)に体内時計を持つ時計細胞があることが見出されました。
つづいて、1997年、ヒトの時計細胞の中に時計遺伝子が発見されました。6個の遺伝子(B-mal1、Clock、Per1,Per2、Cry1、Cry2)が中心(コアループ)で、遺伝子DNAの転写→翻訳(時計タンパク合成)→ネガティブフィードバックというサイクルで時を刻んでいます。さらに、時計機構の安定化をバックアップする安定化ループというメカニズムもあります。
その後、時計遺伝子は人体のほぼ全ての細胞に存在する、そして、脳の視床下部の視交叉上核(SCN)にあるヒトの体内時計は「親時計」と言われ、末梢の心臓・血管・肝臓・腎臓から皮膚・粘膜などのほぼすべての細胞に存在する「子時計」と統合・連携している階層構造をしていることまで判明してきました。